砂糖、おいくつ? |
懐かしい
1970年代のテレビドラマを
何本かまとめて観る機会があった。
どんなドラマかはさて置き、
面白いことに気づいた。
それは、ありふれた喫茶店での
なにげないシーンでのやりとりだ。
物語、登場人物、設定された喫茶店も違うが
ある会話だけは妙に同じなのだ。
例えば、こんなシーンだ。
テーブルを挟んで
男と女が座っている。
そこへ二人分の珈琲が置かれる。
すると、女が砂糖壺に手を伸ばし、
「お砂糖、おいくつ?」と聞く。
すると男は煙草に火をつけながら、
「ふたつ」と答える。
女は、黙ってそれに応えるように
スプーンで砂糖をすくい、
男のカップにふたつ注ぐ。
あの時代、どんなドラマにも
こんなやりとりがあったのを
覚えていないだろうか?
これは男同士でも女同士でも
またはその聞き方もいろいろだが
ほとんどドラマの内容に関わらず
珈琲を前にして
お約束のように交わされていた会話だった。
思い出せば、
私自身も
そのようにした(言った)ことがあるような気がする。
相手は女だったか、男だったかは忘れたが、
そんな経験をお持ちの方も居るのではないか。
いつからだろう、
そんな行為がなくなった。
そういえば、
最近のテレビドラマでは
そんなシーンを観たことがない。
それはそうだろう、
日常にないシーンなど
敢えて演出に入れる必要はないのだから。
では、なぜ、あの時代そんなシーンが
ごくごく日常のなかにあったのだろうか。
それに、
もうひとつ思い出したのだが、
当時の女友達が、
私より先に「いくつ?」と聞き、
当たり前のようなしぐさで
私のカップに砂糖を注いでくれたとき
彼女でもない相手に
妙な愛おしさを感じたものだ。
ただ、残念なことに
私の場合、
当時からブラックで飲む珈琲を好んでいたので
ほとんどの場合、
その申し出を断っていた。
いまから思えば、好みは別にしても
「おいくつ?」の言葉に甘えておけばよかった(笑)。
ところで、いまはどんな会話を交わすだろう?
実は、それを思い出せずにいる。
喫茶店にはいまでもよく入る。
相手が誰であろうと、喫茶店に入り
そのたびに珈琲を注文する。
私は別だが、いまも当然、
砂糖やミルクを所望するひとは多い。
なのに、どうして相手に
そんな言葉をかけないのだろう?
いや、私が知らないだけで
いまでも、そんなやりとりがあるのかもしれない。
「大正館」でも
そんなやりとりを見た(気づいた)という
記憶はないのだが・・・
今度、店主に聞いてみよう。
懐かしいテレビドラマを観ながら
物語の展開よりも
そんなつまらないことに興味を覚えた。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
明日、「大正館」で、そんな会話を交わすお客様がいるか
ちょっと気にかけてみてください。
▼このドラマ、好きだったなぁ・・・(笑)