0戦はやと |
某所で時間潰しに入った古書店に
なんとも懐かしいコミック本をみつけ
いつもながら、思わず購入してしまった。
辻なおき作『0戦はやと』だ。
ただ、正直言うと、
この本を店頭で見かけるまで、
その存在をすっかり忘れていた。
ましてや、週刊の漫画本で読んだ記憶がない。
だから、
テレビアニメで知ったという方が正しいだろう。
解説を読むと、
昭和38年に創刊された「週刊少年キング」に
連載され、当時“戦記物ブーム”だったこともあり
人気を博したとある。
テレビ放映は翌年の1月からだというから
私は小学生になったばかりか。
それでは第一、週刊漫画などは購入していないし
読んでもいないのは当たりまえだ。
でも、アニメの人気もあり
確か「0戦」のプラモデルなどもあって
子供たちの間でも話題になっていたのを覚えている。
正式には、「零式艦上(れいしきかんじょう)戦闘機」で
通称「零(ゼロ)戦」と呼ばれていた。
「零(ゼロ)戦」といえば、
昨年話題になった
ジブリの宮崎駿監督作品『風立ちぬ』を思い出す。
まさに、ゼロ戦の設計者・堀越二郎と
作家の堀辰雄をモデルに、
1930年代の日本で
飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描いた物語だ。
ご覧になった方も多いだろうが、
私はまだ観ていないし、あまり観たいとも思わない。
理由らしい理由というものはないが
ただ宮崎アニメにいまは興味がないのだ。
誤解のないように記すが
けして宮崎アニメやジブリが嫌いではない。
むしろ、古くは『ルパン三世』や
いまでも人気の高い『トトロ』をはじめ
『天空の城ラピュタ』などは好んで何度も観て
自宅にDVDもあるくらいだ。
ところが、ある時期を境に
どうにも宮崎アニメに興味がなくなった。
この話はまたの機会に譲るが、
そんなワケで、
『風立ちぬ』の世間の騒ぎ振りにも
ちょっと興ざめしたというのが本音かもしれない。
さて本題に戻そう。
『0戦はやと』だが、物語の舞台は昭和17年。
日本が本格的に戦争へと突入していく最中だ。
勿論、フィクションだが、
かなりの戦闘シーン(空中戦)が描かれ、
敵味方かまわず、大勢の飛行機乗りが
その戦闘で亡くなっていく。
当然だが、主人公の少年飛行兵・東隼人は
仲間や父親のかたき討ちに飛び回り
敵機を撃墜していく。
当時はそれが痛快だったかもしれないが、
いま読み返すと、なにか複雑な思いがする。
恐らく、“いま”という時代では受けないだろうし
あの当時のテレビアニメを放映しても
果たして、
我々世代でもどれほどのひとが観るだろうか。
一時代に人気を博した漫画でも
時代や社会が変われば、
自然に忘れ去られていくものもあるのだろう。
しかし、作者の辻なおきはその後
『タイガーマスク』という大ヒット作品を生みだし
それこそ、現代にもその魅力は消えることがない。
気になる最終話だが、
わりとあやふやな終わり方をしている。
最後に最大の敵だったパイロットを空中戦で撃墜し、
傷つきながらもはやとは勝利するのだが
その後、彼を見たものはいないとされ、
沖縄の空で活躍したとも聞くが・・・と。
本当に、最後のコマでは
ただの、穏やかな南洋の風景に
「毎日激しい空戦が繰り返された
南洋の大空も
いまはもう平和に青々と
澄み切っている・・・」と記されて終わる。
作者には申し訳ないが、
古本屋の奥で、埃をかぶり
廉価で売られているくらいが一番いいのかもしれない。
いま、ひとつ間違えば、こうした漫画が
また世の中を扇動する気配すらあるのだから。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
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