「マグリット展」で、思い出したこと |
これは狙い目か、とばかりに
東京での開催もあとわずかとなった昨日、
六本木にある国立新美術館で開催中の
「マグリット展」へ出かけた。
開催当初に比べると、
確かに訪れるひとの人数も少ないけれど
のんびりと美術鑑賞というワケには
いかなかった。
それでも、決して期待は裏切らなかった。
今回は日本での開催が13年振りということで、
初期から晩年までの作品約130点が展示されている。
僕も、彼の実際の作品を観るのは数十年振りだ。
でも、初めて観たときは、
どこか“本物に触れる”という
ひとつの経験として観賞していたような気がする。
美術鑑賞という行為も、年齢と共に、
若い頃とはその思いが変わってくる。
最近は、
“観たい”と切実に願う(思う)
作品やアーチストのみに足を運び、
運んだかぎりは
観たい作品にじっくり集中して
とことん味わう、という
単純なことだけれど、
忘れていた“観賞の仕方”をしている。
ご存知と思うが、
ルネ・マグリット(1898-1967)は、
ベルギーの国民的画家で、
20世紀美術を代表する芸術家だ。
今年3月25日から6月29日(月)まで
東京・六本木にある国立新美術館で
その大規模な回顧展が開催されている。
彼の作品群を眺めながら
彼を初めて知った頃のことを思い出した。
絵画(油彩)を本格的に学ぶために
美術系の学校に通い始めた歳だから
1970年の後半だ。
画家の故池田満寿夫氏が著した
美術批評書に
「ルネ・マグリット」という名前が再三登場し
それが、どのような絵画かということも
彼独特の視点で紹介されていて
一度、その作品をまとめて観たいと
思うようになったのだ。
その後、東京で開催された
彼の回顧展を初めて観ることができた。
それから、彼の作品に対する知識が増えると
僕自身がマグリット作品を
所有していたこと気づかされた。
それは、僕のレコード棚に収まっていたのだ。
有名な話(らしい?)ので、今更だけれど
あのザ・ビートルズのレーベル
「アップル・レコード」に描かれている
“青いリンゴ”マークの発想が
なんでも当時、ポール・マッカートニーが
マグリットの描く“青いリンゴ”の作品持っていて
それをヒントにしたとか・・・。
いや、それより、まさにズバリ、
彼の作品を用いたレコードジャケットもあった。
1969年にリリースされた
ジェグ・ベック・グループの2ndアルバム、
「Beck-Ola」に描かれているのは
紛れもなくマグリット作品「盗聴の部屋」だ。
1970年にリリースされた
ラスカルズの「See」に使用されているのは、
鳩のシルエット「大家族」。
ほかにも、色々あった。
また、明らかに彼の作品をベースに
描かれたのがわかるレコードジャケットもある。
例えば、
1973年に発売された
ザ・ローリングストーンズのEP盤
「Angie」のジャケット。
さらには 1974年、
ジャクソン・ブラウンの3rdアルバム
「Late for the Sky」も同様だ。
こんな風に見て行くと
彼の作品を、またはそれをベースにしたり、
ヒントにした作品の多さに驚く。
そんなこんなとツラツラ考えていたら
既に1967年に亡くなっている彼が
2015年の現在にも燦然と生き続けている
ということの凄さを改めて感じた。
アーチストとは、かくあるべし、か。
少し高尚な気分を味わった後、
日本橋界隈に住む友人夫妻と
人形町の酒屋で飲んでいるうちに
マグリットのことなどすっかり忘れて
ただの酔っ払いオヤジになって帰った。
やっぱり、というか当たり前だが、
アーチストとは、
ほど遠いところで生きているのを痛感する(涙)。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
▼大正浪漫夢通りサイト
http://www.koedo.com/index.html