ハリスの旋風 |
懐かしい漫画本が出てきた。
ちばてつや作
『ハリスの旋風(かぜ)』だ。
1959(昭和34)年に創刊された
少年漫画雑誌「週刊少年マガジン」に
1965(昭和41)年から1967年まで掲載された、
いわば“学園”ものの走りのような物語だ。
主人公である石田国松は中学生。
屋台のラーメン屋を営む石田家の長男で、
静岡でラーメン屋を営んでいたが、
国松が札付きの乱暴者で、
多くの学校を退学になり、
とうとうその地では住んでいられなくなり
東京に引っ越してきたという設定だ。
ひょんなことから、名門ハリス学園に入学し、
まさに“青春ドラマ”さながら
剣道、野球、拳闘、サッカーなどなど
スポーツ万能なその身体能力を活かし、
ハリス学園の名前を全国区にしていく
というストーリーだ。
国松本人は、決してイケメンなどではない。
むしろ、学業の成績は悪いが
愛きょうのある、憎めない人気者として
描かれている。
そんなキャラクター設定も、
人気のあった要因だろう。
周囲のキャラも、
この手の定番的な登場人物があふれ、
言ってみれば、ある種、群像劇のようだ。
最終回には、なんと、これまたひょんなことで
アメリカの本校への留学が決まり、
全校生徒の盛大な見送りを受けながら、
羽田空港から渡米していく。
余談だが、1967年当時は、
まだ成田空港は開港していない。
ちなみに開港は、1978(昭和53)年5月のこと。
そういえば、
この漫画のラストシーンに出てくるように
飛行機の離発着の様子を
ターミナルのビルの上から眺めることができた。
ビルといっても、大した高さもないから、
ごく普通に、ほんとうに目の前で
飛行機を見ることができたのだ。
なにしろ、この少し後になるが、
やはり成田開港前に父親がアメリカに行くとき
この漫画のように
羽田空港の国際便ターミナルビルから
父親の飛行機を見送った記憶がある。
▼本文には無関係だが、第1巻の最初の見開きに
「大正堂書店」という本屋が出てくる。
奇しくも“大正”とは・・・(笑)
話を戻そう。
その『ハリスの旋風』だが、
漫画誌掲載とほぼ同時に
テレビアニメとしてフジテレビで
1966(昭和41)年から1967年まで放映されていた。
なので、確か小学校の中学年だった僕は
漫画誌は買えないものの
テレビで(モノクロ放映だけれど)毎週
観ることができたので
とてもお気に入りの一本だった。
今思えば、学園(校)生活をそのまま
体現していたような物語で
いじめのことも、
友情のことも、ちょっとした恋心のようなものも
もちろんスポーツの熱さも
ぎっしりと詰まっていたように思う。
もちろん、パソコンも携帯も
Lineなんてものもない、
とてもアナログな世界(時代)のことだけど。
僕の母方の実家(現さいたま市大宮区)で
屋台のラーメン屋をみつけたとき、
思わず、国松のお父さんの屋台かと思って
走り出し、きょろきょろと
その屋台の親父の顔を見ていた
・・・これも遠い日の思い出だ。
多分、こんな“学園”ものなど
いまの子たちには面白くもおかしくもないだろう。
これも、時代の流れのなかで
消えていくもののひとつかもしれない。
それでも、あきらかに
僕らは、こんな時代の、
こんな学生生活を送っていたのだ。
最後にもうひとつ余談だが、
ちばてつやの名前を一躍有名にした
『あしたのジョー』は、
この作品の連載が終わった翌年、
1968年から掲載が始まった。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
▼大正浪漫夢通りサイト
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