読んでから観た、「バンクーバーの朝日」 |
某出版社の宣伝コピーで
「観てから読むか、読んでから観るか」
なるものが流行った。
これは、小説の映画化で、
文字通り、本を読んでから映画を観るか、
それとも映画を観てから・・・というもの。
そんな文句を思い出したのが
2014年12月に公開になった
石井裕也監督の「バンクーバーの朝日」だ。
気になってはいたけれど、
どうも出演者に面々に
自分自身の気持ちが投影できるか
ちょっと不安だった。
妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、高畑充希といった
若手の人気俳優陣だが、
個人的に世代が違いすぎるのと、
なんだか若者相手のドラマを見せられるようで
躊躇してしまっていた。
それで、とりあえず、その原作となった
テッド・Y・フルモト著
『バンクーバー朝日軍』を読み始めた。
そんな風なので、実は、
最近になって(今さらながら)映画の
「バンクーバーの朝日」を観たのだ。
もっとも、映画は
その本を下地にしてはいるが
あくまでも映画的に
エンターテイメントに仕上げている。
そのこと自体は、別に気にはならない。
本は本であり、映画は映画なのだから。
物語をここでだらだら述べても
無駄に紙数を増やすだけなので割愛するが、
概略を記せば、
20世紀の初め、つまり1900年代初頭
日本人がカナダに移住する。
そこで、厳しい差別や貧しさに耐えながら
少しずつその地に根ざしていく日系人の歴史のなかに
戦前のカナダ・バンクーバーに実存した日系人野球チーム
伝説の「バンクーバー朝日」があった。
その誕生と栄光と、歴史の闇に葬られていくという、
いわば史実に基づいたストーリーだ。
この映画の評価や
ほかの人の感想はわからないが、
個人的な、あくまでも私見で言うなら、
ラスト(といっても、本当にラスト)で
この主人公らが
太平洋戦争(第二次世界大戦)の始まりと共に
それまで築いてきたモノを全て没収され、
強制収容されていく場面に涙した。
いま以上に遠く、日本から離れた異国で
新しい日本人とその街ができつつあるとき、
日本の政治やら、軍部やらの身勝手で
戦争を始めることで、
血のにじむ努力を重ねて築き上げてきた物事
すべてはが一瞬にして崩れていく、
いや崩されていく、そのことに
思いを馳せると、映画ながらに涙が出た。
当時、国内はどうであったか、
それは今までも知るところではあったが
異国の地で、当時、そこに居た日本人らが
どうなっていたのかは
なかなか知る術がない。
単純に、弱小な野球チームが、カナダで
人気のチームに育っていく過程もわくわくして
楽しめるが、
この結末にはそれ以上の感情の動きがある。
それも、史実であるということに。
ちなみに、この本には続きがあり、
同じくテッド・Y・フルモト著の
『テディーズ・アワー』も読んだ。
これは、その「朝日軍」の
元エースピッチャーだった
テディ古本氏が、単身日本に戻り、
NHKの英語アナウンサー
(北米向けの海外向けDJ)として
戦時下の海外放送に関わるという
これも史実に基づいた
もうひとつの「バンクーバーの朝日」だ。
「戦争」と一言で語ること、知ることの難しさを
改めて痛感する。
とくに、ほんとうに、こうして
そのことによって、まったく罪もなく、非もない
市井の人々が翻弄されていくこと・・・
戦後70年を越えて、僕らは、
いったい何を学んだんだろうか。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
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