「大正館」で朝食を |
映画の小道具に珈琲は欠かせない。
とくに洋画は、
珈琲の登場しないものを探す方が大変だ。
何気ない会話に、
励ましや慰め、癒しに
喜び、悲しみにも
出会いに、別れに
なんの脈略も、必然性もないときでさえ
そこに珈琲が当然のようにある。
そして、いつも思うのだが、
それがどんな珈琲かはわからないが
みな旨そうに見える。
どんな映画のセリフだったかは記憶にないが
こんな短い会話だけ鮮明に覚えている。
女「珈琲なら、あるわよ」
男「もらおう」
女「じゃ、温めなおすわ」
男「いい、珈琲でありさえすれば」
この後、次のカットへ移り、
珈琲を飲むシーンなどなかった。
でも、なにか、こんなやり取りが好きだ。
似たようなシーンやセリフなら、
数えきれないほどある。
そのなかで、個人的に好きなシーンのひとつが
オードリー・ヘップバーンが主演した
『ティファニーで朝食を』(1961年)の冒頭だ。
原作はアメリカの作家トルーマン・カポーティの作品である。
この作品の原作者を知ったとき、
あの『冷血』で知られるカポーティとは
にわかに信じられなかった。
余談だが、つい先ごろ、
映画『カポーティ』で、そのカポーティ役を演じ
アカデミー賞の主演男優賞を受賞した俳優
フィリップ・シーモア・ホフマン氏が
亡くなったという記事を読んだ。
薬物中毒死だったらしいが、まだ46歳とは若すぎる。
話を戻すが、
美しく、高級なドレスを身に纏った
オードリーに
なんとも不つり合いの紙袋。
その中から取り出すパンと珈琲・・・。
これ以上は無駄な解説なので省くが
うっとりと見入ってしまった。
かなり前のことだが、
ある女友達から
まさにその、
ニューヨークにあるティファニー店で
購入したというボールペンをもらったことがある。
ボールペンが、というより
あのティファニーで・・・と
そのことが嬉しくて大事にしてたのだが
どこかで紛失してしまい
ひどく悲しかった。
ティファニーのような高価商品は扱っていないが、
映画のような
おいしいパンと珈琲はいつでも提供できる。
ぜひ、あなたも
『シマノコーヒー大正館で朝食を』。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
明日は休業のお店が多いかと思いますが、
当店はいつものように営業いたします。