川越への旅・その5 |
映画監督の山田洋次氏が
某局のテレビ番組に出演していた。
そのなかで
俳優の故渥美清の話しになり
懐かしいテレビドラマに言及した。
それは、
CXの『男はつらいよ』でブレイクする前に
TBS系で放映されていた
『泣いてたまるか』という番組だった。
1966(昭和41)年から
1968(昭和43)年まで放映された
1話完結のドラマで
毎回、監督も脚本も異なり、
主人公の役どころも違うというもの。
主役を務めたのは渥美清と
元東京都知事の故青島幸男のふたりだが、
隔週ごとに交代していた。
放送当時、私は小学生だったが
この番組は両親が観ていたため
必然的に私も観ていた記憶がある。
何十本(話)と放映された物語のなかで
1本だけ忘れられない回(話)がある。
とは言っても、
内容自体はほとんど記憶にないが、
川越が舞台だったということで覚えている。
父親がテレビのなかを指差し、
「ほら、喜多院だよ、ここは!」と
小学生の私に教えてくれたのだ。
それだけで、妙に嬉しかった。
そのまま、永い間忘れていたが、
山田監督の話しからそれを思い出し、
ちょっとネットで調べてみた。
こんなときばかりは、
便利な世のなかに感謝する。
放映されたのは
1967(昭和42)年2月19日。
『泣いてたまるか』第34回(話)
「ウルトラおやじとひとりっ子」だとわかった。
脚本は山根優一郎、
監督(演出)は高橋繁男とある。
残念ながら物語の詳細まではわからなかったが、
やはり渥美清主演で、
殿山泰司、藤村有弘、松村達雄といった
錚々たる役者陣が脇を固めていた。
果たしてどのような物語で、
どのような川越の風景が映されていたのか。
そこで、もうひとつ思い出したのが
映画『鬼畜(きちく)』だ。
あの松本清張の原作で
野村芳太郎がメガフォンをとった
1978(昭和53)年の作品で、
主演に緒方拳、その妻に岩下志摩、
そして愛人に小川真弓。
これは川越が舞台になっているため、
ロケも市内随所で行われた。
さすがに、
映画公開当時20歳を越えていた私は
池袋の映画館で観ている。
物語とは別に
スクリーンに川越の景色が映り出されるたび
妙にどきどきしたのを覚えている。
そういえば、まだ川越駅界隈に住んでいた
かなり小さい頃、
昔の川越駅でテレビだか映画だかの撮影が
わりと頻繁に行われていた記憶がある。
周囲にひとだかりができ、
「撮影だってよ、ほら俳優の○○がいるよ!」
と大人たちが
興奮した口調で話していた。
あまり触れたくはないが、
5年ほど前になるのか
2009年3月から9月に放映されていた
NHK朝の連続テレビ小説
『つばさ』というのもあった。
世間の評判は知らないが、
私個人の感想を言えば、
別にわざわざ川越を舞台にしなくても
成立する物語なのではなかったか。
そう考えると、
なにもかもが取って付けたようで
あまり愉快なものではなかった。
週を追うごとに、そうした思いが募り
とうとう興味も薄れ、
最後まで観ずに終わった。
川越を舞台にした・・・と
地元では前評判が高かったかもしれないが
その後、「良かったなぁ」という声を
あまり地元の友人、知人からは聞いたことがない。
いつもの余談だが、
若い頃に、ある街の
地元発行のタウン誌を手伝ったことがある。
そのとき、取材等をしながら感じたのは
表層だけでその街を描いても
地元に生まれ、
地元で育ったひとの
真の気持ちは描くことができない
という当たり前のことだ。
仕事上で得たノウハウだけでは
どうにも太刀打ちできない。
すべてを捨てて、
そこに生活の場を移す覚悟がないなら
本当の意味で
仕事も成立しないということだ。
話しを戻すが、
先に挙げたふたつの作品は
果たしてどんな川越が描かれていたのか
ぜひ、もう一度観たいものだ。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
明日はロケハン日和。
撮影でお越しの皆さま、休憩なら当店で。