私の「潜水艦」物語 |
数年前の話だが、編集者であり、著述家の
松岡正剛氏の書評で
漫画家かわぐちかいじ原作の『沈黙の艦隊』を
挙げていたのを読んだ。
多岐にわたる分野の書籍を読破していることは
承知していたが、
まさかそれが漫画にまで及んでいるとは思わなかった。
『沈黙の艦隊』は
1988(昭和63)年から96(平成8)年まで
講談社の漫画週刊誌「モーニング」に連載されていた。
雑な説明をすれば、現代を舞台にした
原子力潜水艦とその艦長を中心にした物語である。
松岡正剛氏の書評を頼りに
数年前、古本屋で全32巻を揃えて読破した。
それが今日、たまたま実家から出てきたのだ。
懐かしく数ページを繰っているうちに
松岡正剛氏の影響以外に
この物語に魅力を感じた、
もうひとつの理由に思い至った。
それは、“潜水艦”にあったのだと。
小学生の頃、
初めて読んだSF小説が
フランスの作家ジュール・ヴェルヌ作の
『海底二万里』(1870年発行)だった。
潜水艦ノーチラス号の挿絵のカッコよかったこと、
それを操るネモ船長・・・。
当時は、海底もまだまだ宇宙空間のように
いまよりさらに謎につつまれた世界だった。
また、その時期に
フジテレビで放映された『マイティジャック』という
空も飛行する潜水艦のSF特撮ドラマが重なった。
それが1968(昭和43)年だから、
小学校の5、6年生だろうか。
そして、またそれと並行するように
漫画雑誌「週刊少年サンデー」に連載されていた
漫画家小沢さとる原作の『サブマリン707』
(1963~65年掲載)にも魅了されていた。
『サブマリン707』に至っては、当時
そのプラモデルも人気が高く(「サンダーバード」同様に)
私も、真っ先に製作したものだ。
その後、リアルタイムではないが
1963年に東宝で映画化された
原作・押川春浪 監督・本多猪四郎/円谷英二による
『海底軍艦』の轟天号(ごうてんごう)にも心を躍らせた。
なぜ、この時期にやたら潜水艦の物語が多かったのか
私がそう感じただけなのか、まったくわからない。
理由はともかく、個人的にも好きな世界観だったのだろう。
1982(昭和57)年に日本で公開された
ウォルフガング・ペーターゼン監督・脚本の
ドイツ映画『U・ボート』に興奮した覚えがある。
特に、カメラワークの賜物か
艦内のリアルな描写には、
まるで乗り組み員のひとりになったような気分を味わった。
私は既に社会人となっていたが、映画館で子供のように見入った。
少年の頃最初に憧れたSF物語の舞台は海底にあったが、
それから数年の月日でその舞台は宇宙に移った。
潜水艦から宇宙船に変わったが、「艦」への憧れは同じかもしれない。
ひょんなことで、そんな頃のことを思い出した。
いまでは、海底ものも宇宙ものも
私をあまりワクワクさせてはくれない。
どちらも、あの頃に比べたら
あまりにも現実的なものになり過ぎた。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
明日は図書館の児童書で『海底二万里』でも借りるか
・・・待てよ、今もあるのか、そんな時代錯誤の本?
▼大正浪漫夢通りサイト
http://www.koedo.com/index.html