BIG BIRD |
「東京国際空港」。
この呼び名より、
通称「羽田空港」という方が馴染みかな。
まさか、
“BIG BIRD”なんて言うひとはいないよね。
以前にも書いたけど
仕事柄一年を通して
日本のあちらこちらへと出かける。
なので、東京駅を拠点にする以外は
羽田空港を利用することが多い。
そのせいか、
新幹線はもとより、
飛行機を利用することでさえ
通勤するのと同じように
普通に出かけて、
ごく当たり前のように帰ってくる。
慣れとは恐ろしいけど、
そんなビジネスマンは
いまや掃いて捨てるほど居るだろうから
けっして珍しくはないはず。
ただ、僕は未だに
羽田に行くと
遠い昔のある出来ごとを思い出すんだ。
それは、ほんとうに、
もうかなり昔、まだ十代中頃のこと。
僕は、当時大好きだった女の子と
初めて、“デート”らしいデートをして、
1970年はじめの「羽田空港」にでかけた。
まだ“BIG BIRD”なんて言われるはるか前、
しかも、文字通り“International”Airportで、
すべての国際線が発着する空港でもあった。
そう、成田空港など存在もしていない時代だ。
あのとき、どうやって彼女を誘ったのか、
なんで羽田空港だったのはまるで覚えていない。
もちろん、どんな会話をしたかさえも。
ただ、やたら緊張していたのか、
僕はお腹も空かず(だから食事もとらず)
ひと時も腰を落ち着けることなく、
終始うろうろ空港内を歩きまわっていたけど
長い時間、ふたりで居ることの不思議さと
満足感だけは十分に味わっていた。
もちろん、
僕は最高にハッピーな気分だったけれど、
果たして彼女はどうだったのか?・・・
なんていう、
相手を思いやる気持ちの余裕さえなかった。
その当時の自分を思うと
恥ずかしいやら
情けないやら。
でも、そう、それだけに僕のなかには
未だにそのことや
そのときの気持ちが甦ってくるんだ。
それは、
「甘酸っぱい」なんていう言葉じゃないし、
「ほろ苦く」も、けして悪くはない気分、
うまく表現しがたい妙な気持ちだ。
空港デートからほどなくして
僕らは別れてしまった。
その後、僕は何人かの女性と
羽田空港から北海道や沖縄へ遊びに出かけた。
それは、それなりにワクワクもしていたけれど、
空港はただの発着場に過ぎず、
あのときの、彼女と出かけた
「羽田空港」とは
あきらかに違う場所だったような気がする。
何十年もむかしの、他愛ない出来ごとだから
彼女はきっと、
かつて羽田空港内の展望デッキから
こんな僕と一緒に
世界中の飛行機を眺めたことなど
記憶の片隅にも残ってはいないだろう。
僕はといえば、
最後に彼女からプレゼントされた本に
当時羽田空港内にあった
その展望デッキへの入場チケットを
今でも大切に挟み込んでいる・・・
めったに開くことはないけれど。
本日も、ご来店ありがとうございました。
マスターに代わり、お礼申し上げます。
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