村松友視と銀座百点 |
長い時間電車内で過ごすので
いつものように
読みかけの文庫本をバックに詰めて出た。
ところが、どう間違えたのか
読み終えたばかりの本を持ってきてしまい、
出発駅の構内で
慌てて本屋により、一冊文庫本を購入した。
だいたい、駅構内の本屋は
スペースの都合や
僕のような時間潰し目的で購入する者が
ほとんどなので
雑誌類か新刊のものくらいしか置いていない。
さっと、文庫の棚に目をやると
村松友視著書の
『銀座の喫茶店ものがたり (文春文庫)』
を見つけたので、
手早くそれを購入した。
彼は昔から好きな作家の一人だったので
迷うことなくそれをバックに入れ
列車に乗った。
内容は、銀座というおとなの街にある
有名店から穴場までの喫茶店について
彼の想い出と共に紹介されていた。
実は、銀座は僕にとっても想い出多き場所だ。
社会人のスタートが、
この銀座という街からだった。
ここで学んだこと、出会ったこと(ひと)、
辛かったことも、嬉しかったことも
この街の随所に眠っている。
勿論、この街のあちらこちらの喫茶店の想い出も。
著書のなかにある
資生堂パーラーも、
洋菓子舗ウエストも、
銀座文明堂や不二家、銀座コージーコーナーも
さらには月光荘画材店、伊東屋といった
文具店にある喫茶コーナーにも触れていて
僕自身にとっても、
すべてなじみ深い喫茶店ばかりだ。
なかには知らないものあったりして
面白かった。
そして、もうひとつ思い出したのが
この文章が掲載されていた冊子のことだ。
どうやら、これらは
銀座のタウン誌『銀座百点』に連載されていたという。
このタウン誌も、僕にとっては
ほんとうに懐かしいものだ。
1980年から5年あまり
僕は銀座で過ごしたのだけれど
(もちろん、それ以降もよく出かけている)
その間、銀座の街には
僕の仕事に関係する資料が
山のように存在していて、
しかも、あちらこちらで
それを手にすることができたのだ。
『銀座百点』もそのなかのひとつで
タウン誌とはいえ、
各界を代表する著名人がこぞって
質の高い文章を寄せている
おそらく他にはそうない稀有な冊子だ。
調べてみたら、
「銀座百店会」という任意の団体が母体となり
昭和30年に創刊されたとあるから
僕が生まれる前から、
この冊子は存在していたのだ。
それが、いま現在も続いているのだから
これはもう単なるタウン誌とは言えまい。
銀座の想い出を語り始めると
きりがないので
適当なところで留めておくが、
今回ばかりは、長いはずの列車内も
そう苦にはならずに済んだ。
そういえば、あの頃、熱心に集めた
十数冊の『銀座百点』も、いつの間にか
手元から紛失し、
いまは頭のなかの想い出にしかないのが
残念でならない。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
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