のらくろ |
どうしても、同時期に人気を博した
『のらくろ』にも記しておきたい。
とはいえ、
これもリアルタイムでの体験はないので
当然あとになってから知ったものだ。
『のらくろ』も『冒険~』と同じく
大日本雄辯會講談社(現・講談社)の雑誌
「少年倶楽部」に
1931(昭和6)年1月号 から
1941年(昭和16年)10月号まで
掲載されていたとある。
なので、
ほとんど掲載時期が被っていたことになる。
そう考えれば、「少年倶楽部」という
雑誌そのものにも興味がわくが、
それはまた別の機会に譲ることにしよう。
『のらくろ』とは
ノラ(野良犬)の黒犬・・・
のらくろ(野良犬黒吉)が、
猛犬聯隊という犬の軍隊に入営して活躍し、
物語を重ねるごとに昇進していくという話だ。
作者は漫画家
田河水泡(たがわすいほう:1899-1989)氏で、
弟子に「サザエさん」の
長谷川町子氏がいたのは有名な話しだろう。
ところが、僕は、偶然にも
著名な文藝評論家の名著のなかに
『のらくろ』について書かれた一文があり
それを読んで驚いたことがある。
それとは、
大学入試に例文として掲載されるなど
いまでも多くのひとに知られる
小林秀雄(1902-1983)氏のエッセイ集
『考えるヒント』だ。
ただ、時世の流行について記しただけなら
さほど驚くことはないのだけれど、
なんと『のらくろ』作者の田河水泡は
小林秀雄氏の義弟であると明かしていたことだ。
田河氏の妻である
作家・随筆家・評論家の
高見澤潤子(1904~2004)氏は
なんと小林氏の実の妹だった。
余談だが、そのとき僕が思ったのは
「世に出るひとは
世に出るひとと縁を結ぶんだなぁ」と。
例えば、
伊丹十三氏と義弟である大江健三郎氏のように。
機会があれば、ぜひ一度
『考えるヒント』を読まれてみるといい。
本題に戻すと、
僕が所有する『のらくろ』本は、
『冒険~』同様に
1967(昭和42)年に復刻版として
講談社から発行されたものだ。
先の『冒険~』にも記したけれど、
かつて掲載誌も時期も同じで
世間の人気や注目度もほぼ同じだったと思う
ふたつの物語が
またこうして同じように復刻版として
世に出ているにも関わらず
なぜ、『のらくろ』だけが
戦後も数回にわたりアニメ化され、
世代を越えてまで認知度が高いのだろうか。
ウィキペディアによると
『のらくろ』のアニメ化は早く、
1935(昭和10)年、
「瀬尾発声漫画研究所」主宰の
瀬尾光世氏により映像となり、
1938(昭和13)年にも同氏により映像化され
一般に公開されている。
戦後、テレビ放送が盛んになると、
1970(昭和45)年10月から翌年にかけ
テレビアニメ『のらくろ』が放映。
さらに1987(昭和62)年10月から翌年まで、
フジテレビで『のらくろクン』が放映されていた。
もちろん、これから推察すれば、
いまの10~20代の若い世代は
もう『のらくろ』など知らないだろうが。
『冒険ダン吉』も『のらくろ』も
僕ら世代とは噛み合うときはない。
従って、この二つの物語に想い出などもない。
にも関わらず、なぜか、この二つの物語は
どこか気になる存在であり、
それが何故かは一向にわからないのだけれど
常に本棚の目立つ所に二冊並べて置かれている。
本日も、ご来店、ありがとうございました。
店主に代わりまして、お礼申し上げます。
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