「うらわ美術館」へ、ぶらりと“現実逃避” |
私が美術館に行く理由はふたつ。
ひとつは、もちろん観たい催しがあるとき、
そしてもうひとつは、
正直に言って“現実逃避”したいときだ。
最近は、
後者の理由で行く場合が多いかもしれない。
そして、後者で行く場合は、極力地味な美術館を選ぶ。
勿論、地味=ダメ、という意味ではない。
私の言う地味とは、簡単に言えば、
上野や六本木界隈で
大宣伝のもとに催される企画展からは遠いとことに位置する
そう、地方に存在する美術館や
独自のテーマを掲げた個人の美術館などを指す。
マスコミがこぞって宣伝に努める企画展の場合、
本気で観に来ているのか、
流行にのるかのように訪れているのか
それは定かではないが、
あまりのギャラリーの多さに辟易する。
そうした傾向を揶揄するわけではないが、
まるで祭り見物のように思えてならない。
私のいう“現実逃避”の対象とする美術館は
それら主流のそれとは対極にあり、
規模もそれほど大きくなく、
その美術館の有り様自体が静かで
ひっそりしたものだ。
考えてみたら、ここ十年あまりの間、
そうした美術館にしか足を運んでいない。
昨今巷のあまりにもバカバカしくなるような
それこそ騒々しいだけの話題や出来事が多すぎて
日常を生きているなかで
からだもこころも疲弊してくる。
そうなると、別の世界に逃避したくなる。
つまり、私にとっての別世界のひとつが
「美術館」だ。
「うらわ美術館」だ。JR浦和駅から、ちょっと昔風の商店街を抜けると
新しい商業用ビルの中にあり、
エレベーターを降りた瞬間、
いつのときも静かな世界を保っていてホッとする。
さらに、そうした美術館で開催されている企画展が
そのときの自分に思わぬ影響を与えてくれるときなど
この上ない喜びを感じる。
今回の展示・・・
『サカツ・コレクション
日本のポスター芸術:明治・大正・昭和の彩り』は
まさにそうした思いを存分に味わえた。
明治から大正、昭和初期までに制作された
宣伝用ポスターの数々が約85点、
それに当時の貴重な「三越」のカタログや
以前このブログでも紹介した宮武外骨氏の発行した雑誌
「スコブル」なども目にすることができ
ほんとうに感動ものだった。
もっとも、誰もが同じ感動を得られるかは別の話なので
私の場合、他人には決してお勧めしないのが常だ。
それにしても、いまから100年以上も前のポスターとはいえ、
なんと美しく、なんとしっかりした描写力なのだろうか。
あくまでも宣伝用とはいえ、
これらはれっきとした美術品だ。
私自身が広告業界に、位置としては下層であり、
隅の隅に属していたとはいえ、
大先輩たちの残したこれらの偉業には大いに触発される。
一枚(一作品)をじっくり眺めていくと、
いまの巷にあふれる、いわゆる宣伝用ポスターの
なんとうるさいことか・・・
どうやら、
広告は時代を映す鏡というが、
まさにいまの時代や社会に則して存在していることを
うんざりするくらい痛感する。
1分、1秒でもこの空間に浸っていたい、
そう思いながらも、
この日もまた日常へゆっくりと戻っていった。
▼同展の詳細は「うらわ美術館」へ
http://www.city.saitama.jp/urawa-art-museum/index.html
※同展の作品協力は・・・
▼株式会社サカツコーポレーション・ギャラリー
http://www.sakaz.co.jp/gallery/index.html
さて、珈琲一杯にどんな価値を見いだすかは
あなた次第ですが、
どうぞ、今日も素敵な一杯を!
――本日のブログ担当は、ぶらりとお散歩さんでした。
▼大正浪漫夢通りサイト
http://www.koedo.com/index.html